【相続した実家の売却】解体してから売るべき?更地・古家付きの判断基準と注意点

2026.09.16

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「誰も住む予定のない実家を相続したけれど、解体して更地にしてから売るべき?それとも古い家を建てたまま売るべき?」

親から相続した実家の売却を進めるなかで、このような悩みを抱える方は非常に多くいらっしゃいます。

家を解体して更地にすると土地としての使い道が広がり、買い手が見つかりやすくなるイメージがあるかもしれません。しかし、安易に解体費用を払って更地にすると、「解体費用の分だけ損をしてしまった」「固定資産税の税金が上がってしまった」「一度解体したことでかえって売却しづらくなってしまった」といった思わぬトラブルに陥るケースもあります。

実家を売却する際は、一律に「解体するのが正解」「古家付きが正解」と決めつけるのではなく、物件の状態・立地・解体費用・税金(手取り額)などのバランスを考慮して判断することが重要です。

この記事では、相続した実家を「更地で売る場合」と「古家付きで売る場合」のメリット・デメリット、知っておくべき費用相場や税金の特例(3,000万円特別控除)、そして後悔しないための判断基準をわかりやすく解説します。

目次

相続した実家を売却・解体する前に「所有関係」を確認する

相続した実家について売却や解体を検討する際は、物件の状態や売却方法を考える前に、まず「現在、誰がその不動産の権利を持っているのか」を確認しておくことが重要です。

相続人が複数いる場合、遺産分割が成立するまでの間は、相続した不動産が複数の相続人に関係する状態となるため、一人の判断だけで実家全体の売却や建物の解体を進めることはできません。

そのため、まずは遺言書の有無や相続人を確認し、必要に応じて遺産分割協議を行ったうえで、「誰が実家を相続するのか」を整理しておきましょう。

また、2024年4月から相続登記が義務化されており、不動産を相続したことを知り、かつその所有権を取得したことを知った日から、原則として3年以内に相続登記を申請する必要があります。

実家を売却する場合にも、被相続人名義のままではなく、相続の内容を登記に反映させる手続きが必要となります。

特に、複数の相続人がいるケースでは、「解体してから売りたい人」と「建物を残したい人」で意見が分かれることもあります。

解体後は元の状態に戻すことができないため、解体業者へ依頼する前に、相続登記や遺産分割の状況、相続人間の意向を整理しておくことが大切です。

相続した実家を売る前に整理したい「2つの選択肢」

相続した実家を売り出すにあたり、まず頭の中を整理しておきたい重要なポイントがあります。

それが「物件の状態(更地か・古家付きか)」と「売却の手法(仲介か・買取か)」という2つの判断軸で考えることです。これらを混同してしまうと、自分にとって最適な売却戦略が見えにくくなってしまいます。

 ①「更地」にして売却する

こちらは建物を解体撤去し、土地のみの状態で売り出す方法です。

買主にとっては「購入後に建築計画を進めやすい」「解体工事の手間や費用がかからない」というメリットがあり、主に新築住宅を建てたい個人や、戸建てを分譲したい不動産会社などがターゲットとなります。ただし、売主側があらかじめ数百万円単位の解体費用を自己負担(先払い)する必要がある点には注意が必要です。

  ②「古家付き(現状)」のまま売却する

こちらは建物を取り壊さず、そのままの状態で売り出す方法です。

売主側は解体費用を事前に準備する必要がなく、手軽に売却活動をスタートできます。買主側は「中古住宅付きの物件としてそのまま住む」「リフォーム・リノベーションして活用する」「購入後に自分の予算で解体する」など、さまざまな活用方法を検討できます。

 「更地・古家付き」と「仲介・買取」は別の判断軸

実家売却で多くの方が陥りがちなのが、「更地にしたから仲介で一般の人に売るのがよい」「古い家があるから買い手がつかず、不動産会社に買い取ってもらうしかない」などの、物件の状態によって一つの売却方法しかないと思い込んでしまうことです。このような思い込みは、自ら売却の可能性を狭め、売却までの時間を延ばしてしまうことになりかねません。

実は、「物件の状態(更地・古家付き)」と「どう売るか(仲介・買取)」は独立した別の選択肢であり、以下のように4つのパターンで柔軟に組み合わせることができます。

仲介(一般市場で個人の買主を探す)買取(不動産会社が直接買い取る)
更地【更地 仲介】

解体して更地にし、新築を建てたい個人へ売る
【更地 ・ 買取】

更地にしたが売れ残った土地を、業者が買い取る
古家付き【古家付き 仲介】

そのまま売り出し、リノベ層や「買主側で解体する人」を探す
【古家付き 買取】

リフォームも解体もせず、現状のまま不動産会社へ売却する

実家を解体して「更地」で売るメリット・デメリット

相続した実家を解体して更地で売却する場合、買主にとっての検討のしやすさが向上する一方で、費用負担や法的な注意点が存在します。メリットとデメリットをそれぞれ詳しく確認していきましょう。

メリット:建物解体の手間がなく、新築目的の買主が検討しやすい場合がある

実家を解体して更地で売却する大きなメリットは、「新築住宅を建てたい買主」の選択肢に入りやすくなる点です。

古い建物が残ったままだと、買主側で解体工事の手配や費用の見積もりをする必要があり、購入までのハードルが高くなってしまいます。あらかじめ更地にされていれば、解体工事の手間や費用見積もりの負担がないため、ハウスメーカーで新築を検討している個人や、分譲住宅を建てたい不動産会社などからの需要を取り込みやすくなります。

メリット:建物に関する契約不適合責任のリスクを抑えやすい

不動産売却では、引き渡し後に売買契約の内容に適合しない不具合等があった場合、売主が契約不適合責任を負うことがあります。

特に築年数が経過した古家では、「雨漏り」「シロアリ被害」「土台の腐食」「配管の破損」など、売主自身も把握していない欠陥が隠れているケースが少なくありません。建物を事前に解体撤去して更地にしておくことで、建物そのものに関する契約不適合リスクを抑えやすくなるという安心感があります。

デメリット:解体費用を売主が先に負担する必要がある

更地にしてから売り出す場合、数百万円単位の解体費用がかかります。更地にした土地の売却の前に、売主に大きな金銭負担があることはデメリットだといえるでしょう。

鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比べると安価に解体できる木造住宅であっても、建物の坪数や立地条件(重機が入れるかなど)によっては100万〜200万円以上の解体費用がかかってしまうことがあります。さらに、売却活動を始めてもすぐに買主が見つかるとは限らず、「手元資金から解体費を出したのに売却代金が入ってくるまで時間がかかる」というリスクを考慮する必要もあります。

デメリット:住宅用地特例が外れ、固定資産税等の負担が増える

住宅が建っている土地(住宅用地)には、固定資産税や都市計画税を軽減する「住宅用地に対する課税標準の特例」が以下のように適用されています。

  • 小規模住宅用地(200㎡以下の部分) 土地の固定資産税額の課税標準が価格の1/6
  • 一般住宅用地(200㎡を超える部分) 土地の固定資産税額の課税標準が価格の1/3

建物を解体して更地にすると、この特例が適用されなくなります。固定資産税は毎年1月1日時点の土地・建物の所有状況に基づいて課税されるため、更地にした後に年を越してしまうと、翌年の土地の固定資産税は住宅用地特例が適用されなくなることで、大きく増える場合があります。

売却が長期化した場合、高い固定資産税を払い続けなければならない点に十分注意が必要です。

デメリット:解体すると「古家付き」には戻せない

一度建物を壊してしまうと、当然ながら「やっぱり古家付きで売り出したい」「リノベーションしたい買主に売りたい」と思っても元に戻すことはできません。

解体した後に「実は中古住宅として使いたい買主が多いエリアだった」と判明しても取り返しがつかないため、解体前に必ずエリアの市場ニーズを確認することが重要になります。

【重要】再建築可否・接道・セットバック等を確認せず解体すると、売却条件が悪化する場合がある

更地にする際、実は最も注意しなければならないのが建築基準法上のルールです。これを事前に確認せずに解体してしまうと、土地の価値が大きく暴落する危険性があります。

1. 「再建築不可」の土地を解体してしまうリスク

都市計画区域内では、建物を建てる際には原則として「幅員4m以上の道路に土地が2m以上接していなければならない」というルール(接道義務)があります。 昔建てられた実家の中には、現在の建築基準法の要件を満たしていない「再建築不可」の物件も少なくありません。再建築不可の土地でも既存建物を利用できる場合がありますが、増改築や大規模なリフォーム等には制約が生じることがあります。既存建物を解体すると建物がなくなり、その後は原則として新たな建物を建築できないため、利用方法が大幅に制限されるおそれがあります。著しく売れにくい物件になってしまう恐れがあります。

2. 「セットバック」により利用できる敷地が狭くなるリスク

土地は2m以上道路に接していても、接している道路が幅員4m未満の建築基準法42条2項道路に該当する場合などには、建替え時にセットバックが必要となることがあります。

建物を解体する前には、必ず不動産会社や自治体の建築指導課に確認し、「解体した後に新しい建物が問題なく建てられる土地か」を調べる必要があります。

実家を「古家付き」のまま売るメリット・デメリット

解体工事を行わず、建物をそのままの状態で売り出す「古家付き売却」。事前にまとまった資金を準備する必要がないため手軽に始められる反面、長引いた場合のリスクも存在します。こちらもメリットとデメリットを整理しておきましょう。

メリット:解体費用を事前に負担せず売却活動を始められる

古家付き売却の最大のメリットは、解体費用の先払いを避けられる点です。

更地にしようとすると、解体費用や残置物の撤去費用として100万〜200万円単位の資金を事前に用意しなければなりません。「相続したばかりでまとまった現金がない」「売れるかわからないものに事前に数百万円も払いたくない」という方にとって、解体費用を先に負担せず売却活動を始められる点は、大きなメリットといえるでしょう。

メリット:住宅用地特例が適用されている間は固定資産税等の負担を抑えられる

住宅用地に該当し、住宅用地特例が適用されている間は土地に対する「住宅用地に対する課税標準の特例」が継続して適用されます。

これにより、土地の固定資産税の課税標準額は小規模住宅用地(200㎡以下)で6分の1、都市計画税の課税標準額は3分の1に軽減された状態が維持されます。万が一、売却期間が物件によっては長期間を要する場合があり、年をまたいでしまった場合でも、更地の場合のような「固定資産税の急増」による保有コストの圧迫は回避できます。

メリット:リノベーション層・中古住宅需要を取り込める

近年は「新築価格の高騰」や「自分好みの住まいを作りたい」というニーズから、中古戸建てを購入してDIYやフルリノベーションをする買主が増加しています。

築年数が古くても、柱や基礎がしっかりしていれば、「安く買って自分好みに改修したい個人」にとって魅力的な物件となります。また、「解体費用を少し上乗せしてでも、自分が納得する施工業者で解体したい」と考える買主にとっても、古家付きのまま売り出されている方が検討しやすいケースがあります。

デメリット:老朽化が激しい場合は売却期間が長期化し、管理負担が続くことがある

建物の老朽化があまりに激しく、雨漏りや傾きなどが放置されている物件の場合、一般市場(仲介)では買い手から敬遠されやすくなります。

買主が見つからず売却期間が長期化すると、その間も「固定資産税の支払い」「火災保険の維持」「庭木の剪定」「換気や掃除」といった管理の手間とコストが売主に重くのしかかり続けます。遠方に住んでいる相続人の場合は特に、この維持管理自体が大きなストレスとなります。

【注意】放置しすぎると「管理不全空家・特定空き家」指定で増税リスクも

古家付きのまま売れず、空き家となった実家を適切に管理せず放置し続けると、自治体から行政指導を受けるリスクがあります。

空き家対策特別措置法により、現状で倒壊の危険がある「特定空き家」または放置すれば特定空き家になる恐れのある「管理不全空家」として行政より指導を受け、その後さらに勧告を受けると、住宅用地特例の適用対象から除外されます。

「壊さずに放置していれば節税になる」わけではない点に注意が必要です。

早期売却を狙うなら「不動産買取」も有力な選択肢

一般的な市場で買主を募集する「仲介」では売却が難しい場合や、管理の手間をすぐに手放したい場合には、不動産会社に直接買い取ってもらう「不動産買取」が有力な選択肢となります。

不動産買取の仕組みと仲介との違い

「仲介」は、不動産会社が広告などを出して一般の個人客(買主)を探すシステムです。買主が見つかるまで数か月〜1年以上かかることがあり、成約の保証もありません。

一方、「不動産買取」は不動産会社自身が買主となり、直接物件を買い取るシステムです。査定額に合意すれば数日〜数週間で売買契約が成立し、現金化までが非常にスピーディーという特徴があります。

買取なら解体不要・残置物そのままで売却できるケースも

不動産買取の大きなメリットは、売主の手間がほとんどかからない点です。

買取を行った不動産会社は、自社でリフォームや解体を行って再販します。現在の建物の状態が悪い場合でも、現況のまま買取可能なケースがあります。「古い建物の解体」「室内の不用品(残置物)の撤去」「庭木の伐採」などを売主側で行わずに済む場合があり、現状のまま引き渡せる場合もあります。「遠方に住んでいて管理が大変」「売却前にかかる解体費用や片付け費用の負担が大きい」という場合に非常にメリットが大きい手法です。

買取のデメリット:一般に仲介による売却より売却価格が低くなる傾向がある

不動産買取の最大のデメリットは、売却価格が仲介の相場(市場価格)に比べて低くなる傾向がある点です。

これは、買い取った不動産会社が「解体費」「リフォーム費」「再販時の利益・経費」を差し引いて買い取るためです。「少しでも高く売りたい」という方の場合は、まずは仲介での売り出しを優先するのが基本戦略となります。

ただし、高く売るために仲介を選択しても買主が見つからなければ意味がありません。立地や建物の状況などを考慮すると、不動産買取の方が適しているということもあります。

【費用相場】実家の解体や売却にかかるお金の一覧

実家の売却を検討する際、切っても切り離せないのが「いくら費用がかかるのか」というコスト面の問題です。事前に相場感を把握しておくことで、売却後の手取り額を正確に試算できるようになります。以下はあくまで一例です。地域や現場条件によって大きく異なります。

建物構造・坪数別の解体費用目安(木造・鉄骨・RC)

建物の解体費用は、構造や延床面積、立地・施工条件などによって費用が大きく異なります。一般的には構造が頑丈になるほど、解体に必要な重機や人件費が増えるため高額になります。

建物構造坪単価の目安30坪の場合の目安
木造約3万円〜5万円 / 坪約90万円〜150万円
鉄骨造約5万円〜7万円 / 坪約150万円〜210万円
鉄筋コンクリート造約6万円〜9万円 / 坪約180万円〜270万円

※実際の費用は、敷地の狭さ(重機が入れるか)、アスベスト使用の有無、ブロック塀や庭木の撤去費用の有無などによって変動します。

見落としがちな「残置物処分費」「測量費」の相場

建物の解体費用以外にも、実家売却では以下のような「見落としがちな諸費用」が発生するため注意が必要です。

・室内の残置物(不用品)処分費用

家庭内の家具や生活用品などの残置物は、原則として一般廃棄物です。解体前に市区町村のルールに従って処分するか、一般廃棄物処理業の許可を持つ事業者等へ依頼する必要があります。

・土地の境界確定測量費用

隣地や道路との境界が曖昧な土地を売却する場合は、買主から確定測量を求められることがあります。

知っておくべき「被相続人の居住用財産(空き家)の3,000万円特別控除」

相続した実家を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、通常は所得税や住民税などの税金がかかります。しかし、条件を満たしていれば税負担を大きく抑えられる重要な特例が存在します。

一定の要件を満たすと、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる

この制度は、相続した実家(一人暮らしだった親の家など)を売却した際、譲渡所得から最高3,000万円までを控除できる特例です。2024年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上の場合は、1人あたり最高2,000万円になります。
対象となるのは、主に昭和56年(1981年)5月31日以前に建てられた戸建て住宅です。原則として、適用後の課税対象となる譲渡所得が0円となれば、この譲渡に係る所得税・住民税の負担を抑えられます。

この制度は一定の要件を満たせば、相続した家屋を取り壊して敷地のみを売却する場合も特例の対象となります。ただし、古家を残して売却する場合には現行の耐震基準を満たしているか売却後に買主が耐震リフォームを行う必要があります。

解体の時期だけで判断せず、譲渡後の解体等を含む最新の適用要件を一次情報で確認する

「この特例を使うためには、売主が自分の費用で耐震リフォームをしなくてはいけない」と思い込んでいる方も少なくありません。

しかし税制改正により、「譲渡後、翌年2月15日までに一定の耐震基準を満たすこととなった場合、または家屋の全部が取り壊された場合」でも特例が適用できるよう要件が緩和されています。このように、不動産に関する法律は期限が設けられていたり、変更がなされたりすることが少なくありません。

そのため、最新の適用要件を確認した上で、専門家と相談しながら進めることが大切です。2026年現在の主な適用要件を確認しておきましょう。

  • 原則として、相続開始直前に被相続人の居住用家屋であり、被相続人以外の居住者がいなかったこと(一定の老人ホーム等への入所の場合には特例あり)
  • 昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された家屋(区分所有建築物を除く)であること
  • 相続から売却まで、事業・賃貸・居住の用に供されていないこと(空き家であること)
  • 売却代金が1億円以下であること
  • 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
  • 2027年12月31日までの譲渡であること

※特例の適用には上記以外にも詳細な要件があり、法改正や特例の適用期限などの変更が生じる可能性もあります。売却や解体に着手する前に、必ず国税庁ホームページなどの一次情報を確認するか、税務上の適用可否については税務署または税理士に確認し、売却方法については不動産会社とも相談しましょう。

どっちが正解?「解体 vs 古家付き」は手取り額と売りやすさで比較する

相続した実家を売却する際、「更地にするか」「古家付きで売るか」の判断に絶対的な正解はありません。表面上の「売買価格」だけでなく、解体費や税金を差し引いた「最終的な手取り額」と「売却のしやすさ」のバランスで比較・判断することが大切です。

更地化による価格上昇分が、解体費・税負担・売却期間などに見合うか比較する

「更地にした方が高く売れる」と言われることもありますが、重要なのは「高くなった金額が、解体費用などの持ち出しコストを上回るかどうか」です。例えば、更地にすれば200万円高く売れるとしても、解体費用が300万円では意味がありませんし、解体費用が100万円でも売却期間が長引けば年をまたぎ、翌年1月1日時点で住宅用地に該当しない場合などには更地にしたメリットが一部相殺されてしまいます。

「解体にかかるコストと売却期間中の維持費」を差し引いても十分な手取りが残るかを慎重に見極める必要があります。もちろん、実家の掃除など、金額には表れない売却期間中の維持にあたっての手間も含めた比較も重要です。

更地売却が向いているケース(建物状態が悪い・新築需要が高い・再建築に問題がない等)

以下のような条件に当てはまる場合は、解体して更地で売り出す方が良い傾向があります。

  • 建物の老朽化や損傷が激しい(雨漏り・シロアリ被害・傾きなどがあり、住居としての使用が難しい)
  • 周辺地域で新築一戸建ての需要が高い(ハウスメーカーや分譲業者のターゲットになりやすい)
  • 建築基準法上の再建築に支障がないことを事前に確認できている(道路にしっかり接しており、解体しても価値が落ちない)
  • 事前に解体費用を用意できる余裕がある

古家付き売却が向いているケース(状態が良い・立地が良い・解体費用をかけたくない)

一方、以下のようなケースでは古家付きのまま売り出すメリットが大きくなります。

  • 建物や設備のコンディションが比較的良く、そのまま入居できる。リノベーション需要も見込める
  • まとまった解体費用を事前に用意するのが困難
  • 再建築不可やセットバックなど、解体すると土地の価値が下がるリスクがある
  • 売却に時間がかかる見込みが高く、売れなかった場合の固定資産税の増税リスク(住宅用地特例の外れ)を避けたい

不動産買取が向いているケース(遠方で管理が限界・早く現金化したい等)

仲介での売却にこだわらず、「不動産買取」を選択した方がよいケースもあります。

  • 遠方に住んでおり、実家の掃除や庭木の管理に通うのが難しい
  • 相続税の納税資金を確保する必要があるなど、早期の現金化を希望している
  • 室内にごみや不用品(残置物)が大量に残っており、片付ける手間や費用をかけたくない
  • 仲介で売り出したが買い手が見つからず、管理コストだけがかかり続けている

相続した実家を解体する前に「不動産会社」へ相談すべき理由

「誰も住まないから、まずは解体して綺麗にしよう」「老朽化が激しく、このままで売れるわけはないから解体しよう」と自己判断で進めてしまうのは非常に危険です。解体工事に着手する前に、まずは実績のある不動産会社へ相談することが重要です。

売却方法が決まる前に解体業者を先行手配し、不要な費用を負担するリスクを避ける

「更地にした方が売りやすいだろう」と解体業者を先行して手配してしまうと、本来かける必要のなかった数百万円の解体費用を負担することになりかねません。

売却方針が決まる前に解体してしまうと、以下のようなリスクが発生します。

  • 「古家付き」を希望するリノベーション層の需要を自ら捨ててしまう
  • 売却までの間に「住宅用地特例」が外れ、固定資産税等の負担が増える場合がある
  • 買取の場合には買取価格に解体費等を織り込めるケースもあり、売主が先に解体する必要がない場合があります。

売却のルートや戦略が確定する前に解体を決めてしまうのは避け、まずは「現状のまま売れる選択肢」を残した状態でプロに相談しましょう。

解体前に「古家付き」と「更地」の両方で査定し、解体費を含めた手取り額を比較できる

不動産会社に相談する最大のメリットは、「古家付きで売る場合の査定価格」と「更地にした場合の想定売却価格」を同時に出してもらえる点です。

両方の査定額を比較し、さらに「解体費用」や「売却期間中の固定資産税」などを差し引くことで、「どちらの選択肢が最終的に手元にお金を多く残せるか(手取り額)」を比較検討しやすくなります。

再建築可否・接道・境界等も含め、解体前に物件全体の売却戦略を立てる

前述した通り、建物を解体した後に「実は再建築不可の土地だった」「セットバックで敷地が狭くなり価値が落ちた」と発覚しても、一度壊した建物を元に戻すことはできません。

不動産会社に事前に相談すれば、売却活動に入る前の段階で以下のような法務・調査上のリスクをチェックしてもらえます。

  • 接道状況や建築基準法上の再建築可否
  • セットバック(道路後退)の要否とその影響
  • 隣地や道路との境界確定測量の必要性

解体工事そのものだけでなく、税金・法規制・土地境界まで含めた「物件全体の売却戦略」を事前に組み立てることで、想定外のトラブルや損失を未然に防ぐことができます。

まずは解体せず、「古家付き・更地・買取」を比較してから判断しよう

相続した実家の売却において、「更地」と「古家付き」のどちらが適しているかは、物件の条件や売主の事情によって大きく異なります。安易にひとつの方法に決め打つのではなく、建物の状態や解体費用、適用できる税制特例(3,000万円特別控除)、そして「最終的な手取り額」を総合的に比較した上で判断することが、後悔しない売却への近道です。

  • 更地売却が適しているケース: 建物が非常に古く新築需要が高いエリアで、解体費用を差し引いても十分な手取りが残る場合
  • 古家付き売却が適しているケース: 解体費用を持ち出さず売り出したい場合や、リノベーション需要が見込める場合、再建築不可リスクを避けたい場合
  • 不動産買取が適しているケース: 遠方で管理が難しく、片付けや解体の手間をかけずに早期現金化したい場合

上記は一般的なケースに過ぎず、ご自身の実家も同じとは限りません。

特に「誰も住まないから」と自己判断で焦って解体してしまうと、思わぬ増税や再建築不可による資産価値の下落など、後戻りのできない失敗につながる恐れがあります。

解体業者に依頼する前に、まずは信頼できる不動産会社へ相談し、「古家付き」と「更地」の両方のパターンで査定・シミュレーションを受けることから始めることが、有効な第一歩となります。

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