田舎の実家や空き家はどう処分すべき?後悔しない方法と法制度をわかりやすく解説

2025.06.09

サムネイル

田舎の空き家問題が深刻化する理由とは

近年、空き家の所有者が、「処分できずに悩む」という問題が急速に深刻化しています。都市部に人口が集中する流れから、田舎・地方の空き家については需要が少なく、いくら金額を下げても売れない地域も増えています。特に50〜60代の方が親から実家や不動産を相続した後に、空き家を放置することのリスクを感じているケースが増えています。

1.人口減少と高齢化で「売れない家」が急増

地方では若年層の都市部流出が進み、空き家・空き地・空室が“供給過多”状態になっています。需要がないエリアの物件は、「売りたくても売れない」「貸したくても借り手がつかない」といった課題を抱えており、処分が難しい不動産=負動産と化しています。中には、数年間売れていない事例などもあり、次の世代に引き継がせたくないのにと悩まれているかたも大勢いらっしゃいます。

2.建物の老朽化で活用が困難に

空き家の多くは、築30年〜50年超の木造住宅となっています。屋根や柱の劣化、雨漏り、外壁の劣化などが進んでおり、リフォームには高額な費用が必要です。このような状態の建物は、売却価格がつきにくく、「解体して更地にするしかない」という状況も多いのが実情です。

3.相続後の対応が遅れると事態が悪化する

親が亡くなってからしばらく実家を放置してしまうと、片付け作業自体が億劫になることは珍しくありません。

また建物の傷みが進行し、売却などにもマイナスとなります。さらに、遺産分割が未了のまま兄弟間で話がまとまらず「何年も処分できない」という事例も少なくありません。

4.地方に強い不動産会社が限られている

田舎の空き家は、取引価格が低額となりやすいため、都市部の大手不動産会社ではあまり取り扱ってくれません。一方で、地域密着型の会社などは、対応エリアが限定的な場合も多く、「どこに相談すべきか分からない」ことが課題になりがちです。

このように、田舎の空き家は「処分したいのにできない」「適切な依頼先が見当たらない」「放置もできない」という三重苦に陥りやすいのが特徴です。

空き家を「所有し続ける」ことで生じるデメリットとリスク

国土交通省の「空き家所有者実態調査」によると空き家を相続した場合、すぐに売る、貸すといった判断をされる方はあわせて約20%程度しかおらず、多くの方は一旦物置、セカンドハウス利用もあわせて約40%となっています。

つまり田舎の空き家を「そのうち使うかも」「気が進まないから後回しに」と放置してしまう方は多いのが実情ですが、所有を続けることで発生する負担やリスクは小さくありません。以下では、代表的な4つのデメリットを説明します。

1.固定資産税・都市計画税などの「税負担」が続く

不動産は利用しているかどうかを問わず、所有者であるだけで固定資産税や都市計画税等の税金がかかります。自宅など日常的に利用している不動産ならまだしも、全く利用していない空き家でも同様に評価額に応じて課税されます。

さらに、建物が老朽化・倒壊の危険があると市町村から判断され「特定空き家」や「管理不全空家等」に指定されると、固定資産税の優遇(住宅用地特例)が解除され税額が数倍に跳ね上がるケースもあります。

2.建物の老朽化による損害賠償リスク

空き家となった建物は老朽化が進行しやすくなりますが、誰も管理していないことで、屋根や外壁、雨樋などが劣化して落下することがあります。こうした建物の一部が、隣地や道路の通行にあたってしまうと大きな被害が生じる場合があります。

また市町村が危険性を認識して、改善を勧告しても対応しない場合、行政代執行により後日費用を請求された事例も数多くあります。

やはり、空き家が老朽化して屋根や外壁が落下した場合、通行人や近隣の車・家に損害を与えると、所有者が損害賠償責任を負う可能性があります。

また、草木の繁茂や虫の発生、悪臭などにより近隣トラブルに発展するケースもあり、裁判や和解交渉に巻き込まれることもあります。

3.不法侵入・火災などの防犯・防災リスク

空き家として放置することで、思わぬ事故に巻き込まれるケースもあります。

生活感が消えると、周囲にも空き家であることが認識されるため、勝手に人が住み着いていたり、犯罪現場として利用されたりするなど、防犯リスクも抱えることになります。

空き家は人の出入りがないため、不法侵入・放火・ゴミの不法投棄などの標的になりやすいです。とくに木造住宅が密集するエリアでは火災時の延焼リスクも高く、重大事故に発展することもあります。

4.将来的に「誰も引き取り手がいない」物件に

子どもや親族が近くに住んでいない場合、将来的に相続人全員が空き家を引き取らず、相続放棄が連鎖する可能性があります。

そうなると、空き家は誰にも管理されない“無管理物件”となり、放置され続けることで地域の治安や資産価値にも悪影響を及ぼすことになります。

空き家を「持っているだけ」で生じるリスクやコストは、想像よりも大きいものとなります。

田舎の空き家を処分する7つの方法【選択肢の特徴と注意点】

田舎の空き家を処分するには、所有者の状況・空き家の状態・地域特性に応じた方法を選ぶことが重要です。

ここでは、実際によく検討される7つの処分方法を「特徴」と「注意点」に分けて解説します。

1.不動産会社に「仲介」で売却する

空き家の処分を想定したときに、最も一般的な処分方法となります。不動産仲介会社が買主を探してくれる形です。市場価格に近い価格で売れる可能性があるのが最大のメリットです。

・売れるまで時間がかかる場合がある(特に田舎エリアでは買い手が付きにくい)

・売れ残ると結果的に放置期間が長くなる

・相場が安い地域だと、不動産会社積極的に動いてくれないケースもある

2.不動産会社に「買取」を依頼する

空き家の処分先を一般個人の方ではなく、不動産会社や買取専門業者に直接買い取ってもらう方法となります。

早期に現金化でき、時間と労力、精神的負担を軽減できるのが特徴です。また契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任)が免責されることが多い点も売主としては魅力です。

・相場より安くなるケースが一般的

・田舎の物件を積極的に買取してくれる業者は限られる

・地域によっては取組可能な業者が見当たらず、費用を払って処分するケースもある

3.解体して更地にして売却する

築年数が長く経過している、荷物が溢れきちんと管理されていない。そうした不動産の場合、ただそれだけで書いてがつきにくくなります。

建物の老朽化が進んでいる場合は、更地にして土地として売却する方法もあります。建物付きよりもニーズが広がる場合もあります。

・解体費用(目安100万~200万円以上)がかかる

・更地にすると固定資産税の住宅用地特例が外れ、税額が上がる

4.空き家バンクに登録してマッチングを待つ

主に各自治体が運営する「空き家バンク」に登録して、買主を探す方法があります。

一般的なポータルサイトなどに比べると利用者は少ないケースもありますが、閲覧している方は、その地域に興味がある方が多いため、移住希望者と空き家活用希望者とうまくマッチングできることがあります。

・必ずしもすぐ売れるわけではなく、登録後の放置リスクあり

・空き家バンク対応の市町村と物件所在地が一致しているか要確認

5.「相続土地国庫帰属制度」を利用する

相続した不動産で、特に活用予定がないものについては、国に返すという選択肢もあります。2023年施行の制度で、相続した不要な土地を国に引き取ってもらえる制度です。

・対象は原則「建物がない土地」のみ(空き家付き物件は解体が必要)

・審査手数料や負担金が発生する

・書類や条件が厳しく、事前に専門家の確認が必要

6.自治体やNPO、法人などへ「寄付・無償譲渡」する

特定の活用目的があれば、地域活性のために町内会、地元NPO、法人、自治体に譲渡できる場合があります。

売却が難しい物件でも「引き取ってもらえる可能性」があるのが利点です。

・事前に自治体や団体が受け入れ可能かどうか確認が必要

・建物の状態や立地によっては断られることも多い

7.相続放棄をして所有権を持たないようにする

相続は金融資産や不動産などの財産だけでなく、借金などの負債もあります。被相続人の財産状況が、資産よりも負債が多いという時には、相続そのものを放棄することで空き家を手放すという選択肢があります。

ただし、相続発生から3ヶ月以内に手続きしないといけないため、空き家を相続したくない、処分に困りそうといった時には、期日を強く意識して行動することが重要となります。

・相続放棄は家庭裁判所での手続きが必要

・一度放棄すると他の財産も一切相続できなくなる

・判断には税理士や司法書士など専門家の助言が重要

以上が、代表的な「7つの処分方法」の概要と特徴です。

「なかなか売れない」空き家でも売却につなげる3つの工夫

田舎の空き家は「売れない」「値段がつかない」と諦めがちですが、工夫次第で売却に結びつけることは可能です。ここでは、特に有効な3つの改善ポイントを紹介します。

1.価格を現実的に見直す【相場調査と柔軟な判断】

自分が持っている不動産は、主観的な意向も入り、相場よりも高値を期待してしまいがちです。当然売り出すこと自体は可能ですが、需要と供給のバランスから、田舎の不動産市場は都市部と異なり、「希望価格」よりも「実勢価格」への適応が重要です。

不動産会社に査定を依頼しても「思ったより安い」と感じるかもしれませんが、それが現実であるケースが多いです。

2.荷物整理や掃除で第一印象をアップ

空き家の処分において、第一印象は重要です。外観や内装が汚れている、荷物が山積みで古びた印象を与える家は、買い手の興味を損ねます。

とはいえ、大規模なリフォームは費用がかかりすぎるため、以下の「最低限の整備」だけでも十分に効果的です。

放置されていた雑草を除去したり、建物周辺に無造作に置かれている荷物を撤去したりするだけでも印象は大きく変わります。

3.地元密着型の不動産会社に依頼する

田舎の物件は、大手不動産会社では対応してくれないことも多々あります。引き受けてくれても、最優先という訳ではなく、「優先順位が低く後回し」にされがちで、あまり力を入れて対応してくれません。

そのため、相続での空き家対応に強い全国対応の不動産会社や地元の不動産会社、などに依頼するのが現実的です。

買取という選択肢~早期処分を実現する方法

不動産会社へ売却する「買取」では、一般個人の方に向けて売却するよりも、時間と手間を省略できるのが特徴です。

「できるだけ早く田舎の空き家を手放したい」「今のままだとずっと売れない気がする」

そんな方には「不動産買取」サービスの活用が考えらえます。ここでは、買取のメリット・注意点・流れを整理しながら解説します。

1.買取は「スピード」「手間なし」「安心」が揃った方法

通常不動産を市場価格で個人に向けて売却していくには、売主として不動産の商品価値を高める作業をどこまでやるかという問題が生じます。

特に相続した空き家を、魅力的に商品価値を高めることが大変であることが多く、そうした時間と手間を省略できるのが、買取となります。

買取は、不動産会社が直接物件を買い取ってくれる仕組みであり、仲介と異なって、査定〜契約〜引き渡しまでが非常にスピーディーに進みます。

買主である不動産会社は、プロのため古家や再建築不可物件でも買い取ってくれることが多く、その際の金額以外の契約条件としても、相談次第では契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任)を免責にできる場合があります。その他、売却後に「故

障や不具合でクレームが来るリスク」がほとんどないため、安心感にもつながります。

2.どんな空き家でも買取対象になるの?

地域や物件によって対応が異なりますが、以下のような不動産でも買い取ってくれるケースは多いです。

  • 築40年以上の古家付き物件
  • 再建築不可・旗竿地・接道条件に問題がある土地
  • 残置物がそのままの実家
  • 空き家バンクに登録しても反応がなかった家
  • 相続後しばらく放置していた物件など

「空き家買取」は、放置リスク・所有コスト・心理的な負担をすべて解消できる最も現実的で効果的な選択肢の1つです。

処分前に必ず押さえておくべき5つのチェックリスト

田舎の空き家を処分する際、手続きをスムーズに進めるために事前確認すべきポイントがいくつかあります。

ここでは、売却・買取・寄付・相続放棄など、どの方法を選ぶにしても共通して重要な「5つのチェック項目」を整理しました。

1.所有者・名義の確認は済んでいますか?

相続した空き家でも、登記が親名義のままでは処分できません。

田舎の不動産ほど、登記名義がそのままとなっているケースも多いため、登記簿謄本の住所氏名が売主様と一致していることを確認しましょう。登記名義が被相続人のままであれば、名義変更(相続登記)を行う必要があります。

※2024年から、相続登記は義務化され、放置していると過料の対象となります。

2.土地と建物の名義が一致していますか?

土地は父名義、建物は母名義というように、土地と建物の所有名義が別々になっているケースがあります。

この場合、土地だけや建物だけでは非常に売りづらくなってしまい、価格もとても割安となってしまいます。処分するには土地建物の名義人の権限が必要になるため、売買などにより名義を揃えておくか、同じ方向性で動けるように意思疎通を取り交わしておくことが大切です。

3.建物や土地の状態は把握していますか?

田舎の不動産の場合、子供世帯は都市部に出てきて一度も現地を見たことがないという事例も少なくありません。買取で譲り渡すにしても、現況がどうなっているのか物件状況を把握しておくことは大切です。

わかる範囲でも状況を説明できた方が、査定や交渉がスムーズに進みます。

4.リフォーム・解体履歴はありますか?

築年数が経過している不動産でも、過去に大きなリフォームなどの履歴があれば、評価が大きく変わることもあります。

「実家じまい」の前に、過去に大きな修繕やリフォームを行っていた場合、その記録や見積書が残っていれば提出しましょう。

建物価値を伝える資料となり、「活用可能な家」として評価される可能性が高まります。

また、以前に部分解体や増築をしていた場合は、法的な再建築制限がないかも要チェックが必要です。

5.相続人全員と処分方針の合意は取れていますか?

遺言書がなく、相続人で遺産分割協議を行った場合などは、兄弟姉妹の複数人で共有としているケースがあります。

この場合、共有者の1人が処分したくても全員の同意がなければ売却はできません。そのため、なるべく共有とすることは避け、仮に共有に場合にはできるだけ早い段階で話し合いの場を持ち、今後の方針について決めておく必要があります。

このように、空き家の処分には「思った以上に確認すべきこと」があるのが現実です。

よくある質問(Q&A)

田舎の空き家を所有している方から寄せられる「よくある悩み・質問」をまとめました。

ご自身の判断の参考にしていただければと思います。

Q1:空き家を処分する前にリフォームした方が売れますか?

A:原則として、リフォームせずに売却・買取を検討するのが無難です。

お金をかけても、その費用がそのまま売却代金に上乗せされて高く売れるとは限らないためです。

田舎の空き家は、リフォーム費用を回収できない可能性もあるため、そのまま売却を検討することをおすすめします。

最低限の掃除・草刈り・荷物整理などで、印象を良くするほうが効果的な対策となります。

Q2:相続放棄をすれば空き家の税金も払わなくていい?

A:相続放棄が認められれば、以後の所有者としての義務は基本的になくなります。

ただし、相続放棄しても、相続開始から放棄までの間の管理責任(損害発生時など)は問われる可能性あり

  • 放棄したとしても、次順位の相続人に負担が移る可能性が高く、家族間で問題になることも
  • 形式的な放棄ではなく、法律に基づいた正式な手続きを踏む必要あり

Q4:空き家を賃貸として貸し出すのはあり?

A:地域によっては有効ですが、リスクもあるため慎重に判断すべきです。

入居者が決まれば、毎月の賃料が収入源として活用できる可能性があります。また自治体によっては「移住支援・子育て世帯向け住宅」としての需要があるケースもあります。

ただ、賃貸募集を行うための修繕や管理の負担が必要となり、トラブル発生時の対応(滞納・退去・修繕など)も必要となる場合があります。

最も懸念されるのは、築年数が古すぎると貸せる状態に持っていくまでの初期投資が大きい割には、設定できる賃料が安く、初期投資の回収までに長期間となることです。リフォーム費用と想定賃料収入のバランスを考慮して慎重に判断する必要があります。

まとめ 空き家処分で未来へつなぐ選択を

親世代にしっかり活躍してくれた田舎の不動産について、相続のタイミングで整理することは、社会的にも意義あることです。田舎に残された空き家を「負動産」として放置し続けることは、税金・維持費・トラブルリスク・相続人間の対立など、未来の大きな問題につながりかねません。

この記事でご紹介した通り、正しい知識と選択肢を知ることで、空き家は“処分できる資産”に変えることができます

空き家処分を「後回し」にしないことが最大の対処法

「いつか売ろう」「時間ができたらやろう」と思っているうちに、建物は老朽化し、相続人が増え、権利関係が複雑化していきます。

実際に、空き家の処分に数年かかった事例も少なくありません。

仕事の早い人は、「作業が早いのではなく、着手までが早い」という言葉もありますが、空き家への対応も同じことが言えます。

行動するなら「今」。選択肢は豊富にある

本記事で紹介した処分方法は、以下のように多岐にわたります。

  • 仲介による売却
  • 不動産会社による買取
  • 自治体・法人への寄付
  • 空き家バンク登録
  • 解体して更地で売却
  • 相続土地国庫帰属制度の活用
  • 相続放棄という選択

どの方法が最適かは、物件の状態やご家族の状況によって異なりますが、「選べる状態」にいる今こそが最大のチャンスです。

まずは「相談」から始めよう

空き家の問題は、1人で抱え込まず、プロと一緒に解決する時代です。

  • 自分で調べる時間がない
  • 兄弟間で話がまとまらない
  • 古くて売れるか分からない
  • とにかく早く手放したい

こうした悩みをお持ちの方は、今すぐ「無料相談」から始めてみましょう。

未来の負担を回避し、家族と地域に安心を残すための第一歩です。

何かお困りな点がございましたら、お気軽にご連絡をお待ちしております。

【監修者】
村上 雄介 相続不動産株式会社 代表取締役
不動産売買仲介・相続コンサルティングを専門として、18年間相続関連の不動産対応に携わる。
宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター、CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、
相続診断士。

COLUMN

相続・不動産コラム

相続・不動産コラム一覧 相続・不動産コラム一覧

田舎の実家や空き家はどう処分すべき?後悔しない方法と法制度をわかりやすく解説

田舎の空き家問題が深刻化する理由とは 近年、空き家の所有者が...

記事を読む »
電話 メール LINE