2025.05.20
不動産の売却にあたり、不動産仲介会社へ正式に売却活動を依頼する際に行うものが、「媒介契約」となります。
媒介契約を結ぶことで、売主は不動産会社に安心して売却を任せることができます。
特に「専任媒介契約」は、バランス型の契約とされており、信頼できる不動産会社に依頼したい方や、手厚い対応を希望する方に選ばれています。
媒介契約は上記のとおり3種類ありますが、共通した注意点やルールがあります。
不動産仲介会社とどの媒介契約を締結するかは、売主としての考え方や売却方針によって自由に選択することが可能です。
ただ、専任媒介契約には、不動産売却を成功させるための合理的なメリットが多数存在します。特に以下の「5つのポイント」は、多くの売主が専任媒介を選ぶ理由となっています。
ポイント1:販売活動に本気で取り組んでもらえる
業界を問わず、営業職を経験されたことがある方であれば、ご理解いただけるのではないかと思いますが、不動産会社の営業担当者は、日々多くのお客様を担当しています。忙しく目の前のことやりながら、全てのお客様を全く同じように、全身全霊で対応をしてもらえるかといえばそうではなく、多少でも強弱がついてしまう実情があります。
どうしても時間に限りがある中で仕方ない面もありますが、専任媒介契約では、売主が1社の不動産会社に売却を託すことになりますので、より優先的に本気で対応してもらいやすくなります。
依頼を受けている不動産会社が自社のみであるという点で、責任感と本気度が大きく高まるのが特徴です。一般媒介のように、他社に取られるかもしれない案件よりも、優先的に広告を出したり、積極的に営業をかけたりしてくれるケースが多くなります。
ポイント2:販売活動の報告義務があるから安心
専任媒介契約では、不動産会社は2週間に1回以上、売却状況を売主に報告する義務があります(専属専任の場合は1週間に1回以上)。
これにより、売主としては、定期的に不動産会社と接触する機会があり、「今どういう状況なのか」を把握でき、安心して任せることができます。
一方、一般媒介ではこの報告義務がないため、売主が自ら問い合わせないと状況を教えてくれない不動産も多く、わざわざ聞かないと教えてもらえないという心理的な負担感につながるケースもも少なくありません。
ポイント3:自分で買主を見つけたときは直接契約できる
専任媒介契約では、不動産会社に仲介を依頼しつつも、自分の知り合いなどで直接買主を見つけた場合、その方と直接契約することか可能です。(自己発見取引)
専属専任媒介契約では、この「自己発見取引」ができないため、自由度の面では専任媒介の方が高いといえるでしょう。
ただ、自己発見取引でも、不動産に慣れていない同士の売主買主で後々トラブルにならないよう仲介会社を間に入れて、契約することがおすすめです。
ポイント4:売却活動を一元管理できる
専任媒介契約では、すべてのやり取りが1社で完結するため、スケジュール調整や内覧対応など、売却活動の管理が円滑で負担軽減につながります。
一般媒介契約では、複数社とのやり取りを自ら行う必要があり、各担当者からの報告内容もばらつきが出るため、管理をしっかり行える方でないと支障が出る場合があります。
ポイント5:結果的に売れやすくなるケースも多い
複数社に媒介を依頼した方が、買主が早く見つかるのではないかと期待される方もいらっしゃいますが、囲い込みなどを行う不動産会社でない限り、基本的にどの不動産会社のお客様にも同じように情報が公開され、購入機会を得ることが可能です。 そのため、営業担当者のの本気度、社内の連携体制などが整った状態で売却活動が行われる専任媒介は、一般媒介に比べて結果的に早期成約につながりやすいという傾向があります。
これまでメリットを中心に解説してきましたが、専任媒介契約にもデメリットはありますので、正しく理解して選択していくようにしましょう。
不動産業界には、1つの契約で、売主買主を双方の対応を自社のみで行ういわゆる“両手取引”と、売主買主のどちらかのみを対応する“片手取引”というものがあります。
不動産仲介会社の中には、1つの契約において、売上が2倍になる両手取引をしたいために、他社からの問い合わせを止めてしまういわゆる「囲い込み」をするケースがあります。
これは売主にとって大きな機会損失となるため、「物件がなかなか売れない」と感じたら、販売状況の詳細を確認したほうがよいでしょう。
専任媒介は1社との契約です。そのため、もし仮に「他の不動産会社だったら」との比較が難しくなります。そのため、担当者の説明が丁寧かどうか、疑問点が遠慮なく聞ける関係性かどうかなども、後悔しないためには大切なポイントになります。
専任媒介契約は、原則として3か月以内の有効期間で設定されます。
自動で更新されるものではありませんので、延長するには双方の合意が必要です。
また3ヶ月の契約期間内に解除したい場合、「途中解約には違約金が生じるケースがあります」などとしている会社もあります。
宅建業法上は、売主の自由意思による解除は可能とされており、違約金が発生しない場合も多いですが、契約書の特約条項をよく確認しておきましょう。
不動産の媒介契約は3種類ありますが、売主の事情によりベストな選択肢は変わってきます。すべての人に「専任媒介」が合っているわけではありません。
自分の場合はどうか、以下で確認してみてください。
専任媒介が向いている人の特徴
一般媒介が向いているケース
専属専任媒介が向いているケース
専任媒介契約を結んだのに「家が売れない」「問い合わせが来ない」というケースも一定数存在します。
そのようなときに考えられる原因と、具体的な対処法を3つご紹介します。
売り出し価格が相場より高すぎる
5000万円だと安過ぎる物件もあれば、5000万円では高過ぎる物件もあります。これは価格そのものではなく、物件種別と地域の相場から見てどうかとの考え方になります。
例えばですが、都心の新築マンションでは5000万円だと安過ぎて即成約となりますが、人口減少が続く県庁所在地などでもない地方での5000万円のマンションだと高過ぎるかもしれません。
つまり、どんなに良い物件でも価格が適正でなければ、反響は期待できません。
【対処法】
物件の魅力が正しく伝わっていない
購入を検討する方に向けた提案・説明資料は大切な要素の1つです。販売図面やポータルサイトの掲載内容も検討者にとっては数少ない検討資料となりますので、物件写真が暗い、図面がわかりにくい、コメントが少ないなど、物件の魅力が正しく伝わっていないと、反響につながりません。
また物件以外でも、実際に住んでいた売主様の生活者目線のメリットなども、お伝えできるより成約に近づくポイントになります。
【対処法】
内覧対応がうまくいっていない
内覧希望者がいても、時間調整ができなかったり、現地対応が悪かったりすると成約率は下がります。
その他なるべく荷物は減らし、見える位置に置かないなどの工夫もあります。家具の配置を変えたり、空室に家具を配置するなど、魅力的に見える工夫も実施していくと成約率向上につながります。
【対処法】
不動産会社へ支払う仲介手数料は成功報酬となるため、専任媒介契約を結んでも、それ自体に費用が発生することはありません。
売却が成立したときに発生する「仲介手数料」については、まとまった金額になることも多いため、支払い金額や時期を理解しておくことが重要です。
不動産仲介会社が宅地建物取引業者として、契約成立により受領できる仲介手数料については、法律により上限額が定められています。
仲介手数料の上限は、以下のように定められています。
通常の住宅売却では、「3% + 6万円 + 消費税」が使われるケースが大半です。
その他売買価格が800万円を下回るような場合については、不動産の流通を促す目的から例外規定が設けられています。
主な仲介手数料の支払いタイミングは以下の2通りです。
不動産会社によって異なるため、媒介契約の締結時に確認することが大切です。
売主の立場で、売買契約締結時に仲介手数料の半金を支払うケースの場合、まだ買主から売買代金全額を受け取っておらず、手付金を受領しても契約内容次第では保全措置を取る場合もあるため、余裕を持った資金計画が必要です。
支払い時期について、もし説明がなければ事前に確認するようにしましょう。
専任媒介契約には、契約期間や解除方法に関する明確なルールがあります。
ここを誤解していると、後々トラブルになるケースもあるため、しっかり確認しておきましょう。
宅地建物取引業法では、専任媒介・専属専任媒介契約の有効期限は3か月以内と定められています。
契約期間満了前に、双方の合意によって更新することは可能ですが、自動更新とすることはできませんので、更新手続きが必要です。
ちなみに一般媒介についても、国土交通省の定める標準媒介契約約款では「3ヶ月以内で定めるものとする」としていますが、法的拘束力はありません。
専任媒介契約の期間に関するまとめ
専任媒介契約は、売主の意思で途中解除が可能です。
ただし、契約書の「特約条項」によっては、広告費や実費請求、違約金が設定されているケースもあるため、注意が必要です。
使用している媒介契約書が、不動産会社独自の媒介契約書か、不動産会社の加盟団体の雛形かなどと合わせて、「途中解約」や「解除条件」も確認しておくとよいでしょう。
契約期間の3か月が終了したとき、売主には以下の3つの選択肢があります。
「ずっと売れない」「対応に不満がある」と感じた場合は、このタイミングでの見直しが最も自然です。
不動産を売却するにあたり、どの会社を選ぶか、どの担当者に依頼するかも重要なポイントです。
専任媒介契約は、不動産会社を「1社のみ」に絞って任せる契約です。
同じ会社でも、どんな担当者が対応してくれるのか、組織対応やチーム対応するとは言っても、窓口になる担当者は1名ですので、その動きは売主と立場からすると重要です。
つまり、パートナー選びに失敗すると、売却成功の可能性が一気に下がるということでもあります。
そこで、不動産会社選びで失敗しないための見極めポイントを3つにまとめました。
売却活動の依頼前に行われる査定報告の際に、どのような説明が行われるかよく確認する必要があります。特に築年数が比較的新しかったり、規模が周辺と比べて同等程度の個人向けに売却活動を行う物件の場合、査定金額は担当者及び会社の匙加減で高めにも安めにもできることから、成約事例や売出事例、周辺相場などその価格根拠の説明はしっかりと聞くようにしましょう。
実際に売却活動を行う担当者の対応力がどうか。会社そのものよりも担当者の能力と誠実さが結果を左右します。
質問への回答が具体的か、提案内容が売主本位になっているかなど確認するようにしましょう。
不動産売却を成功させるためには、媒介契約の種類選びは大切です。
中でも専任媒介契約は、「不動産会社に集中して動いてほしい」「でもある程度の自由もほしい」という方にとって、非常にバランスの取れた選択肢です。
専任媒介契約の特徴おさらい(メリット・デメリット)
不動産売却を検討する中で、多くの方が専任媒介契約について疑問を抱きます。
ここでは頻度の高い質問を、初心者にもわかりやすく解説します。
専任媒介と専属専任媒介の違いは何ですか?
両者は「不動産会社1社と契約する」という点では共通ですが、大きな違いは以下のとおりです。
「少し自由を残したい」なら専任、「完全に任せたい」なら専属専任が向いています。
専任媒介契約は無料ですか?
媒介契約そのものに費用はかかりません。
ただし、売却が成立した場合には、仲介手数料を支払う必要があります(法律で上限が決まっています)。
専任媒介契約の期間はどのくらいですか?
法律上、最大3か月までと定められています。
それ以上は更新が必要となり、更新時には書面による再契約が原則です。
契約期間中に解約できますか?
途中解約は原則可能です。
ただし、契約書に記載された特約によっては、広告費などの実費負担や違約金が発生することがあります。
解除する場合は、不動産会社との合意を得て、書面でやり取りするのが望ましいです。
複数の不動産会社に依頼したい場合はどうすればいいですか?
その場合は「一般媒介契約」が適しています。
複数社に同時に依頼できますが、売却活動の責任が分散するため、積極的に動いてくれる会社を見極めることが重要です。
どの不動産会社が良いか判断できません。選び方のポイントは?
以下の3点が選定のポイントです。
口コミや紹介、LINE対応の速さなども見極めの材料として活用しましょう。
契約更新時に、他の契約形態に変更できますか?
可能です。
3か月の契約期間が終了した時点で、専任から一般媒介、または他社との新たな専任媒介契約に切り替えることができます。
専任媒介契約は、不動産売却を成功へ導く鍵です。信頼できる不動産会社と、納得できる契約を結びましょう。
【監修者】 村上 雄介 相続不動産株式会社 代表取締役 不動産売買仲介・相続コンサルティングを専門として、18年間相続関連の不動産対応に携わる。 宅地建物取引士、公認不動産コンサルティングマスター、CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、 相続診断士。 |
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